事例紹介と施設サービスの特徴
オープンアームズ開設以来、ご利用者に現れた前向きな変化は、当老健・家族・その他の関係者にとって
想像を超えていました。
以下に、まず当老健での代表的な事例の一部(その他の事例は後述) を挙げ、次に想像以上の効果をもたらした
サービス(4大サービス+その他)の特徴をご紹介します。
オープンアームズは、
「ご利用者の可能性を追求しよう。 可能性を引き出しながら、その人の生活を前向きに創造していこう。」
との目標を掲げ、当老健の役割を追求し、展開します。
事例
- ①H.I(女)94才
うつ病、脳梗塞・右片麻痺、両変形性膝関節症、変形性頚椎症、バルーンカテーテル留置、低栄養、急性肺炎4回、心不全
- ⇒ バルーンカテーテルを抜去。離床を励行する。車イス自走が可能となる。
短下肢装具から長下肢装具へ変更し、歩行訓練・トイレ排泄介助を行う。
個別脳トレーニング(名作読本を読む、数唱、2~4字熟語の宙書き、書字訓練)を行う。
俳句クラブで作句し、添削を受ける。うつが減退し、活気と笑顔が戻る。
貧血が改善する ・・・ 血色素(g/㎗) 10.6 → 14.4 ・ アルブミン(g/㎗) 3.5 → 3.7
- ②T.F(女)105才
左大腿骨頸部骨折(観血的整復術)、変形性膝関節症、左乳癌手術後、胆のう炎、高血圧、狭心症、難聴。
認知症:幻視、幻聴、不眠、帰宅願望。
見当識障害:どこにいるのか、ベッドが何なのかがわからない。
スタッフと下宿人、三女と長女の区別がつかない。
- ⇒ 学習療法により、自ら話しかけ冗談を言うようになる。見当識が良くなる。不穏が減る。日中の尿もれがなくなる。
1年後、105才とは思えないほどスムーズに学習ができるようになる。帰宅願望が減る。楽しく学習に参加する。
学習支援者(スタッフ)の姿を見つけると、家人に、「いつもお世話になっているので挨拶をするように」と促す。
面会日には、その日の日付と時間を正確に答えてくれるようになる。
- ③K.O(女)90才
脳梗塞、左不全片マヒ、歩行障害、両側変形性膝関節症、脊椎骨粗鬆症、腰痛、左大腿骨頸部骨折、肥満、糖尿病、
高血圧、重度貧血、尿閉 → 膀胱内カテーテル留置。歩行できず(リクライニング車いす上で傾眠状態)。認知症。
- ⇒ 膀胱内カテーテルを抜去し、トイレ排泄訓練を開始する。→ 車椅子で、自分でトイレへ行くようになる。
歩行器で、50mの歩行が可能となる。夜間せん妄、妄想、性急さが減少する。
自発性が出現し、自ら「お手伝いをしたい」と申し出る。
貧血が改善する ・・・ 血色素(g/㎗) 7.6 → 10.3 ・ アルブミン(g/㎗) 3.2 → 4.0
脳機能テストが向上する ・・・ FAB 9/18点 → 13/18点 ・ MMSE 3/30点 → 17/30点
- ④S.N(女)90才
重度の肺機能障害、暗い部屋への閉じこもり、廃用症候群。
- ⇒ HOT(酸素療法)・吸入療法導入。栄養を強化し、少量頻回歩行を励行する。
身の回りや インテリアを明るく整え、離室し、俳句の添削を受け、行事へ参加するようになる。
- ⑤T.T(女)94才
左大腿骨頸部骨折、脊椎骨粗鬆症、背部痛、左変形性膝関節症、右第3・第7~10肋骨骨折、顔面打撲。
認知症(進行性):興奮・大声出しが延々と続き、何を話しかけても通じない、止まらない。不穏。紙パンツ破り。
食事摂取量も少ない。自分の子や夫を他人と思う。夜間声出し、不眠。
- ⇒ 学習療法開始から3ヶ月後、会話が少しできるようになる。問いに対する返答がスムーズになる。声出しが減る。
日中の覚醒が良くなる。次第に笑顔が増え、穏やかになる。学習後一人で教材を持ち、読んでいる姿を見かける。
食事摂取量が増加し、自力で全食可能となる。子供の名前を言えるようになる。
本人を気づかってくれる、一人のご利用者の名前を呼ぶ。会話が成立し、笑いながら冗談も飛び出すようになる。
家人は、とても苦労をかけた母親なので、母親の笑顔に再び出会えて最高だと感動し、喜ぶ。
- ⑥M.J(女)81才
近親者の死亡後、不眠、徘徊、つきまとい、便を壁になすりつけなどの認知症症状が出現。
- ⇒ おしゃれを楽しみ、宗教書・文芸書を読むようになる。退所し、家人と外国での生活へ。
- ⑦T.K(女)83才
高血圧症、冠虚血、えん下不良、車椅子上半身の深い前屈位、家族が看取りの準備を済ませていた。
- ⇒ 神経内科へ転院。パーキンソン症候群の治療に反応して、再入所。車椅子を自走し、ADLが向上する。
- ⑧M.A(女)84才
脳梗塞、右片麻痺、外傷後パーキンソン症候群、変形性膝関節症、歩行障害、薬物性腎不全、バルーンカテーテル留置、
心不全、低栄養、急性肺炎4回、両下肢腫脹とびらん、うつ病(泣く事が多い)、車椅子自走、徘徊、更衣失行。
- ⇒ 認知症症状 及び ぴらんが消失する。シルバーカー歩行が回復し、手芸クラブのリーダーを務める。
- ⑨⑦F.A(女)83才
全身の筋剛直、寝たきり、オムツ排泄、飲水の自己制限による発熱・意識障害・幻覚、
頻回の感冒時安静による廃用症候群。
- ⇒ 車椅子を押し、歩いて食堂・談話室へ移動できるようになる。
オムツをはずし、介助によりトイレで排泄する。発熱・感冒が減少する。
- ⑩I.S(男)76才
脳梗塞、右片マヒ、高血圧、前立腺肥大、狭心症、PCI(経皮的冠動脈形成術)後、下肢閉塞性動脈硬化症、
腹部大動脈瘤、認知症。
入院 → 再入所時、変形性頚椎症により頭部後屈時の疼痛が強く、前屈位固定が著明。入床時、側臥位がとれず不眠。
- ⇒ 毛布で大型円柱形枕をつくり、仰臥位で良眠できた。オートパックカラートを装着するが、ご本人が嫌がり続かず。
可動域拡大マッサージにより、7か月後に完治した。笑顔と活気が戻る。
- ⑪S.M(男)87才
パーキンソン症候群、歩行障害、高血圧症、狭心症、心臓ステント留置、外傷性くも膜下出血、腰椎圧迫骨折、腰痛、
強度の便秘、発語は小声でゆっくり、表情乏しく遠慮がち
リハビリには義務的、自主トレーニングには消極的で、不活発な生活。
- ⇒ 本人、家人、老健専門職参加の合同カンファレンスで病気の長期予後、生活の活性化、自主トレーニング計画書
を理解して実施する。学習療法に意欲的に取り組み、コミュニケーションが増す。
本人が以前描いた素晴らしい絵を、当老健にて展示する。
脳機能テスト ・・・ 経年的に下降なし FAB 14/18 ・ MMSE 24/30
- ⑫K.U(女)84才
腰椎背柱管狭窄症、両上肢・指の筋萎縮・拘縮、バルーンカテーテル留置、おむつ全介助、車椅子介助、食欲不振、
発熱、認知症症状(拒食・ 声出し・幻覚・せん妄)、祷唐の出現と増悪・3度の形成外科手術(理事長担当)、
点滴、栄養療法、除圧、起立性低血圧症(重度)への対処。
- ⇒ 半年後離床、車椅子自走ができるようになる。OTの指導により、見事な押し花を完成させる。
- ⑬K.S(女)91才
両側変形性股関節症(重度)、歩行障害、脊椎骨粗鬆症、右眼失明、左眼白内障術後、
認知症(夜間声出し頻回、被害妄想、自発語なし)
- ⇒ 学習療法開始後、笑顔が出現。家人との会話が成立するようになる。
トイレ排泄が可能となり、排便は日中トイレで済ませる。トイレ介助後に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝える。
ピックアップウォーカーで、40mの歩行が可能となる。自分で、気候に合った服を選ぶようになる。
手芸クラブに参加する。行事の準備を手伝う。声を出して歌うようになる。
脳機能テスト ・・・ ほぼ満点近くまで向上した FAB 7/18点 → 16/18点 ・ MMSE 24/30点 → 28/30点
- ⑭S.S(男)88歳
脳梗塞、右視床出血、構音障害、えん下障害、左口角よだれ、三尖弁閉鎖不全症、心房細動、慢性腎疾患ステージ3、
認知症:自発性低下。夕食をとったことを忘れ、夜間におやつをほしがる。発語は、小声で歯切れ不良。
- ⇒ 学習療法開始後、声が出るようになった。表情が明るくなり、自ら挨拶するようになった。学習を楽しみにする。
自分で身辺の整理をするようになる。日中は、ベッドに横にならずに起きている時間が増えた。
スタッフに、ねぎらいの言葉をかけてくれる。家人が面会に来て帰るとき「気を付けて帰れ」と優しく声をかける。
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施設サービスの特徴
当老健がご利用者のニーズ(軽く考えた要望ではなく、生活・人生にとって必要と判断されるもの)を把える方式は、
「竹内式高齢者ケアマネジメント ‐ 8領域 21ニーズ」に学び、出発したもので、漸次記録様式を変えています。
サービスはニーズから導き出されます。
当老健のサービス計画は、医師・看護婦・介護士・リハビリ療法士・栄養士・ケアマネジャーによって毎週開催される
サービス担当者会議で、時間をかけて木目細かに検討して作られています。
検討の過程では、ご利用者一人ひとりについて、病気・身体機能・職歴・学歴・嗜好・性格・行動パターンに留意し、
「現状のレベルが望ましいレベルと乖離(かいり)していないか」の判定や、「乖離の原因」の分析には専門的知識が
不可欠であると認識し合い、原因分析の上に「的」を射た計画を立てています。
①健康疾病管理
病院は、疾病の精密検査・診断・治療を集中的・効率的に行い、病状を短期間に安定状態に到達させます。
老健は維持療法を施しますが、加齢に伴う予備力の低下によってり急性増悪が起こりやすく、体調の変化も
日常茶飯事です。
これらへの、随時・適時の対応に努めています。
◆医師は、必要配備数 0.5人(常勤換算・週 20時間従事)であり、2人の医師(理事長:整形外科・形成外科、
施設長:内科)が分担して、ご利用者の健康・疾病管理にあたっています。
◆医院と老健の間にある空中の全天候型連絡橋を経由して、緊急時往診、レントゲン検査(肺炎・骨折・腸閉塞)、
超音波検査、外科・整形外科の専門的処置 等を行います。(連絡橋は、災害時には避難路となります)
◆入所後に判明した既往症の再燃や、新しい疾病の発症に適時に対応するため、休日・夜間を問わない随時の検査、
医療処置のほか、諸種の手続き(前医への情報確認や、他科:歯科・眼科・耳鼻科・皮フ科・泌尿器科・精神科・
心療内科・脳外科・神経内科 等への通院や入院、家族の意思確認)、救急車や施設車による搬送等を行います。
従来の老健での健康疾病管理は、医師の形式的配備の下で主に看護師が行ってきましたが、入院期間の短縮化
に伴い、医師が直接管理する必要性が高まっています。
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②水・栄養の管理
高齢者は脱水症を起こしやすく、生活動作能力が落ち、活気・意識レベルも低下し、仮性認知症に陥りがちです。
◆当老健では、脱水症に注意を払い、経口水分管理表を用いてチェックし、必要時は点滴療法を施します。
◆栄養療法は、「健康を支える栄養学」に基づき、施設長が栄養素重視の食事処方箋をご利用者毎に吟味して発行
し、専任の栄養士が食材の調達(冷凍食品を使わず鮮度のよいもの)やメニューを担当し、味覚・視覚上優れた
食事を提供しています。
◆加えて、後述の佐藤和子先生が研究を重ねて開発された食事分析ソフトを用いて、重要な栄養素を充足する献立を
作成することが可能になりました。 平成21年に導入し、活用できていることは、心身の回復のために食事を重視
している当老健の方針を支える、力強いツールになっています。
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以下は、平成17年12月 全国介護老人保健施設協会発行の機関誌「老健」掲載文より抜粋
生き生きはつらつ暮らせる『食』を求めて
栄養士 黒澤 一政
「栄養重視」は当施設の三大サービスの一つである。
施設長(内科医師)が指導する「健康を支える栄養学(大塚製薬健康推進本部長・佐藤和子医師の提唱による)」に
基づく食事は、蛋白質・ビタミンなど主要な栄養素を含む食品群(第一は赤群・第二は青群)を強化し、生活活動度・
体重・血糖を指標に黄群食品の摂取単位数を調査するもので、従来の、年齢・身長・生活活動度による所要エネルギー
や三大栄養素の比率の枠にとらわれない。 これにより、多くのご利用者に、体力・気力・貧血・低蛋白血症・やせ・
肥満・顔や毛髪の色艶が改善されていく。
厨房の職員は、施設栄養士1名、労務委託6名で、モットーは、まず旨い! 次に美しい! こと。
新鮮な食材と手作りにこだわり、冷凍食品に頼らない。
小規模施設で厨房が食堂に隣接する利点を活かし、出来たての温かさ、香り、家庭の味を忘れない。
また、食事中のご利用者を、日々細やかに観察する。
ご利用者の五割弱を占める、在郷出身で質素な食事をしてきた人が、御飯・みそ汁・漬け物だけで十分と言う場合は、
おかずこそ大切、と声かけをしている。
形態は、咀疇・嚥下・摂取量・摂食動作・体調等について、看護・介護職員と情報交換をして調整している。
行事食は、新年会・お花見・運動会・夏祭り・敬老会・文化祭・クリスマス会など、行事の意義や楽しみを演出する
べく、メニュー・食器・盛りつけ・あしらいに創意工夫を凝らす。 クリスマス会では、ご利用者手作りのケーキを、
香り漂うレギュラーコーヒー、優雅なカツプ&ソーサー、テープルクロスと共に、合唱団・ボランテイアに差し上げ、
好評を得ている。
料理クラブでは、午後のおやつ、夕食のおかず一品を、四~五人のグループでおしやべりを楽しみながら作つている。
参加者は皆料理経験者なので、出来上がりは上々。
最高齢・百三歳の女性が団子を丸めるのが速く、形も良いのには、驚き、感動させられた。
ふだんは、給湯器からのお茶であるが、三時のおやつにご利用者に急須からお茶入れをしてもらったところ、火傷もせず
「お茶のお替わりはどうですか?」と、 生き生きと出来た。
このように、ご利用者をお客として受け身にするのではなく、例えば、食事の前後に食卓を拭き、一輪挿しに庭の花や
緑葉を活け、みそ汁をよそうなどしてもらい、元気な生活者に変えていきたい。
今後も「ご利用者が身体と心の健康をとり戻し、生き生きはつらつ暮らせる『食』を求めて精進を重ね、良い結果が
出れば厨房職員の喜びであり、誇りである。
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以下は、平成25年2月20日 福島県立須賀川桐陽高等学校で、校医産業医として開いた健康管理講座からの抜粋です
「健康を支える栄養学」の紹介
施設長 黒澤 厚美
独自の栄養学によって、前人未踏の食事療法を打ち立て、「病気の予防・病気からの速やかな回復・健康状態の
より良い維持」に成功した豊富な事例を蓄積できたので「健康を支える栄養学」と命名した。
提唱者 佐藤和子医師(経歴、著書、ビデオ、講演、後述)
1 事例の一部 ⇒ 以下は、同栄養学に基づいた食事療法による効果です。
①風邪・インフルエンザ ⇒ 寄せ付けなくなった。
花粉症 ⇒ 著しく軽くなった。
広範囲・重度のアトピー性皮膚炎 ⇒ 1ヶ月後に完治した。
②死の4重奏(肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症)、そして高尿酸血症、痛風。
◆肥満:黄群食品(後述)を減らす、または食べない。
赤群食品(後述)を普通の量にする、または増やして食べる。
・小学6年生:登校拒否、夜更かし、朝寝坊。
⇒ 翌日から体重が減り始める。 3週間で、8Kg減少 → 以後、登校を再開した。
・30才主婦:体重160Kg、胸に水がたまり、胸が苦しい。喘息。身体を動かせず、家事・買い物が不能。
超大型男性用の服を着用。
⇒ 6ヶ月後、体重が50Kg減少 → 家事、旅行、バドミントンが可能となり、若返る。
◆高血圧症:10数年間降圧剤服用 ⇒ 1ヶ月半で服薬不要となった。
◆糖尿病(日本糖尿病学会発行の食品交換表による食事では、カロリーを重視するだけで重要な栄養素は
著しく不足している)
・52才男性:食品交換表による食事と血糖降下剤の服用によっても血糖のコントロール不良
⇒ 血糖がどんどん下がり、血糖降下剤不要となった。
・62才男性:43才で糖尿病発病。糖尿病性網膜症。失明寸前で、視力が 0.2。
体調不良:顔・手足のしびれ。だるさ。息切れ。手足の冷感。両足の壊疽(えそ)
⇒ 2週間後、体調が好転。 視力が回復し、運動可能となる。
→ 1年後の視力が 1.0 → 5年後の視力が 1.2に回復した。
→ 糖尿病が完治。 現役で仕事をし、旅行を楽しむ充実した人生となる。
・インスリンを 1日 42単位注射していた人 → インスリン分泌が回復し、1ヶ月後に注射不要となる。
◆高脂血症、脂肪肝
・54才女性:スリムな体型。仕事に没頭し、夜更かし。不定愁訴(肩こり、朝起きるのが辛い、冷え、白髪)
⇒ 1ヶ月で完治した。
◆高尿酸血症、痛風
・男性:16年間服薬するが、脳血栓発症。体調不良で、仕事にも出られず。 ⇒ 1ヶ月後に治癒した。
③心筋梗塞
・60才代男性:カテーテルによる経皮的冠動脈形成術を受ける。
半年後の経過によっては、冠動脈のバイパス手術が予定されていた。
体力・気力低下。不定愁訴(だるい、めまい、考えがまとまらない、根気がない)
病院の栄養指導を守る ⇒ 急速に回復し、4ヶ月後に完治。 手術を回避した。
④脳梗塞
・51才男性:肥満。糖尿病。冠動脈硬化症。高尿酸血症。高血圧症。
入院1ヶ月目より食事療法開始。
⇒ 体重が、6ヶ月で25Kg減少。血液検査値が正常化する。 どす黒かった顔の肌は
透明感が出てきれいになる。 ハンサムになり、自営業の元の仕事に復帰した。
・58才女性:糖尿病、高血圧症、右片麻痺、言語障害。 発病8日目、担当医が回復不能とギブアップ。
⇒ 2週間後、麻痺が治り始め、次第に後遺症もなく回復。
復職し、国際的会議に出席した。
⑤肝臓病
・67才男性:胆石症に伴う急性肝機能障害 ⇒ 1ヶ月後に正常化した。
・21才B型肝炎 ⇒ B型肝炎ウイルス抗体(HBs抗体)が産生されて回復した。
・27才B型肝硬変、肝右葉萎縮 ⇒ 肝左葉が肥大し、肝機能が十分に回復した。
・C型肝炎キャリア(HCV抗体陽性)⇒ 1年後、HCV抗体が陰性化した。
⑥潰瘍性大腸炎
・16~58才の男女 ⇒ 短期間で治癒した。
⑦先天性心臓奇形。モヤモヤ病。不妊症。習慣性流産。障害児。
妊娠中の食生活の改善(特に蛋白質の改善)と生活の改善(夜更かし、寝不足の改善)。
⇒ 子宮内膜が肥厚して懐妊し、正常なお産へ。
⇒ 障害児が激減、町によっては8年間に1人もなし。
⑧子供の体力・学習力の低下:早寝 + 朝食の栄養改善 が鍵。 ⇒ 好転、向上へ。
⑨胃潰瘍で、手術の適応といわれる ⇒ 4日後、胃カメラで数㎜の瘢痕(治癒した跡)が確認される。
⑩リウマチ(「リウマチ友の会」の食事は栄養失調なもの)
⇒ 1~2か月後、関節の腫れが引いたり、寝たきりの人が歩行できるようになった。
⑪癌(急性の老化現象)
・血友病(59%は家系ではなく、突然変異による。)
高額医療 例 1ヶ月に 1億5千5百万円!!(平成 24年 9月に報告された最高額)
平成 23年は、6千6百万円
⇒ 老化、遺伝子損傷を抑える。
⑫老人性うつ病
・80才女性:うつ病の薬を服用。
全身浮腫。腕全体の皮下出血。会話がなく無表情。自宅では、部屋の隅に物体のように座る。
⇒ 2ヶ月後来院した時の家族の話では、皮膚がうろこのようにはがれ落ち、新しいきれいな
皮膚に生まれ変わった。
一人で散歩に出かけ、見聞したことを話し、家事も家族と一緒にできるようになった。
うつ病の薬も自分から飲まなくていいと言って、飲んでいない。
・似たような入院患者 ⇒ 1週間で視線が合い、2週間で笑顔が出て話し始め、次第に歩き始める。
2 独自の栄養学の特徴
①発想の起点
・つくば万博(S60年)において、水耕栽培で1株のトマトが巨木となり、11か月間で13,000個の実を
収穫し、旺盛な生命力を引き出した。 大切な栄養を不足させず、発芽から巨木になるまでの期間、肥料を
一定に保つことによって、長期の生命力、病気に対する大きな抵抗力、老化を否定する旺盛な生理機能を
実現した。 トマト以外の果物、野菜、米、花なども同様の結果を示した。
②身体の成分は、とても速いスピードで入れ替わる。
脳 :1ヶ月で 40%、1年で全て。
胃 :3日で全て。
腸 :1日で全て。
肝臓:1ヶ月で 96%、1年で全て。
腎臓:1ヶ月で 90%、1年で全て。
筋肉:1ヶ月で 60%、200日で全て。
皮膚:1ヶ月で全て。
血液:100~120日で全て。
・栄養素が不足しないように補給を続ければ、身体の細胞は十分に働くことができる。
病気の予防にも、治療にも役立てられる。
・記録映画「2400時間の食事理論」(記録映画作家・羽田澄子氏)は、2400時間 = 100日の間に、
血液は 100%入れ替わることを基に、ヒトの身体の入れ替わりと再生に必要な栄養素を供給する、
良い食事を実践した記録である。
③人間の身体を構成する成分と元素は、地球上の全ての生物と同じである。 その上位3者は、
成分では「水・蛋白質・脂質」、元素では「酸素・炭素・水素」で、全体の93%までも占めている。
④栄養素を3つのグループに分類する。
1 赤群:主に蛋白質 1と2が、生命を支えるために
2 青群:主にビタミン・ミネラル 主役を演じるグループである。
3 黄群:主に糖質、脂質 3が、副次的なグループ。
⑤重要な栄養素に順位をつけ、その必要量を定量化する。
< 順 位 >
1 蛋白質 :生命現象の主役をなす栄養素。
2 カリウム :植物の3大栄養素の1つ。しかも、細胞内では他の2大栄養素より多い。
3 ビタミンC:ウイルスキラー、血管・骨・皮膚を強化する(コラーゲンを結合させる)。
4 鉄 :酸素を供給する。
5 ナイアシン:細胞のエネルギーを作る。
6 ビタミンD:カルシウムを骨に運ぶ。
7 ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、カルシウム、リン、食物繊維
8 炭水化物、脂質:エネルギー
< 1回食の目安値 >
蛋白質 30g、カリウム 1300mg、ビタミンC 40mg、鉄 4.0mg、ナイアシン 6.0mg、
ビタミンD 2.0μg、ビタミンB1 0.40mg、ビタミンB2 0.50mg、ビタミンA 210μg、
カルシウム 300mg、リン 400mg、食物繊維 10g、炭水化物 84g、脂肪 16g、
エネルギー 600Kcal
3 正しい食生活
①早寝(入床 22時)・早起き(起床 6時)
望ましいのは、21時 ~ 5時。 8時間睡眠(還暦以降は9時間以上へ増やす)。
糖尿病の予防にも治療にも関係が深いインスリンというホルモンは、早寝の人ではよく作られる。
シンデレラタイム:どんなに遅くても、24時までに入床すること。
②食事の時間
朝食7時、昼食12時、夕食18時を守る。
インスリンと並んで生命の維持に活躍するステロイドホルモンは、8時~10時に合成される。
その時必要なのはビタミンC。ビタミンCの値打ちは、朝は金、昼は銀、夕は銅と位置づけられる。
よく噛んで、20分以上時間をかけて食べる。
③イーチ・ミール・パーフェクト
栄養素の1回食目安量を、朝・昼・夕の食事で均等に食べること。
4 睡眠の大切さ
①睡眠は脳を管理する:ノンレム睡眠で脳を休養させ、日中の集中力や高い能力を発揮させる。
②睡眠中は、細小動脈が拡張して、その先にある毛細血管へ流れる血液量を増やし、細胞への栄養を供給しており、
拡張期血圧(最低血圧)の上昇を防いでくれる。 最低血圧の上昇は、高血圧症の発病初期に多い。
したがって、高血圧症の初期ならば、睡眠不足を正せば回復してしまう。
文字通り身体の要となる肝臓へは、睡眠中は血液量が3~4割も増えて流れる。
寝不足では、消化器系の血管が収縮し、胃と腸の病気や不調(下痢やその他)を起こし、膵臓への血流が悪くなり、
インスリンの合成が減少してしまう。
→ 糖尿病の予防や治療に、睡眠は極めて有用である。
5 「健康」を人生・生活の目的としがち。 しかし、健康も、お金も、時間も、
全て手段であって、『真・善・美』の追求こそが人生・生活の目的である。
総括 : 『 栄養素の整った食事、正しい食生活、睡眠、加えて
こまめに身体を動かす生活、などに関連して、
“ 病気は起こるべくして起こり、治るべくして治る “ 』
●佐藤和子
群馬県桐生市生まれ。 医師。
昭和42年(1967年)福島県立医科大学卒業。
神戸大学医学部麻酔学教室、国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)、
京都大学医学部医化学教室、兵庫県立尼崎病院心臓センター、国立循環器病センターに勤務。
昭和62年に大塚製薬株式会社の研究所顧問となり、翌年に同社健康推進本部長となる。
平成23年(2011年)特定非営利活動法人ヘルスプロモーションセンターを設立、理事長となる。
■最新の文献
①著書「正しい食生活」でつくる健康
モラロジー研究所(H24年6月出版)
②「れいろう」 H23年10月号
インタビュー 「この人に聞く」
モラロジー研究所(①②のお求め先です)
TEL. 04-7173-3155
【 これまでの著書とビデオ 】
■著書
① 食品成分マップ
② 食品成分カレンダー
③ グラムの本 -実物大の写真に学ぶ-
☆④ 1食品10料理 全3巻のダイジェスト版
⑤ 外食の栄養 -不足成分の補い方-
⑥ リウマチ
⑦ 栄養素の整ったお弁当
⑧ 正しい食生活で、からだが変わった
「健康を育てる会・桐生」体験記
■ビデオ
☆① 2400時間の食事理論
☆☆② 環境と生命体
(上記2つは「正しい食生活」の基本ビデオ)
③ 食事の科学 -沖縄編-
④ お弁当を考える
-横須賀手づくり弁当フェアから-
⑤ バランスの整った食事への挑戦
-社員食堂 釧路の試み-
☆⑥ 心と栄養
⑦ 中学生・高校生の健康と栄養
⑧ 食事を大事にしよう(リウマチ)
⑨ 病気にうちかつ食事理論 1~4巻
⑩ 点検!外食の栄養(外食、持ち帰り弁当)
⑪ 子供の食事を考える(学校給食、家庭の食事)
☆☆⑫「正しい食生活」実践のための基礎知識
※ ⑨⑩は、販売終了いたしました。
現在は、「正しい食生活」の基本ビデオとして
①②⑥⑫の4本を使用しています。
DVDとして、特に②と⑫を中心に、学習用
としています。
≪ 続きを隠す
③コミュニケーション
周りの人が、ご利用者をひとりぽっちにせず、見放さないことを行動で教える。
◆当老健は、小規模(入所・ショートステイを合わせて 50床)・家庭的で、人々の暮しの中にあるため、世間から
引き離された寂しさがありません。 家族・友人が容易に訪れ、医院の外来患者さんも寄っていってくれます。
◆オープンアームズの呼称の意味(歓待の家)にふさわしく、年齢・職業・立場の異なるたくさんの人々の訪れを
両腕を広げて歓迎・歓待し、ご利用者とのコミュニケーションを豊かにします。
◆ご利用者も、自宅への外出・外泊、散歩・お花見・夏祭り・買物・喫茶店・レストラン・食堂・ホテル・博物館・
美術館など外へ出かけ、普通の人と共に過ごす時間を楽しみます。
◆ご家族、知人などの協力が得られれば、施設外への外出は積極的に勧めています。
仕事を持っている家人でも、旗日・日祭日・その他、1年のうちで仕事を休める日は少なくないので、工夫をして
いただければ、ご利用者に幸せな時間を作ってあげられます。
⇒ 普段は別々に暮らしているご利用者の家人(息子・娘・孫さんたち)が、お互いの都合を調整し、年間計画を
立てて、ご利用者を連れて温泉などに泊まりに行く例や、キリスト教信者であるご利用者を、教会の友人が
クリスマスの演奏会や敬老会を開く教会に送迎してくれる例など、様々です。
◆学習療法の導入は、コミュニケーションを革命的に向上させています。(詳細は後述)
◆当老健では、文字を用いてのコミュニケーションも重視して、文集「欅の大樹」を毎年発行しています。
『欅の大樹』の意味するもの
施設長 黒澤 厚美
オープンアームズは、平成10年10月28日に開設されました。
オープンアームズの呼称は、理事長が私淑している日野原重明先生の師、ウィリアム・オスラー博士が近代医学・
医療に献身的に業績を残してのち、英国にて過ごした晩年の家の名前に由来します。 そこには、弟子・友人・
子供などが訪れ、オスラー博士を中心に心豊かな親交を結びました。
このオープンアームズでも、入所・通所される高齢者の方を中心に、家族・友人・ボランティア、その他様々な
年代・職業・立場の方が訪れ、集い、お互いの心の拠り所になることを願っています。
オープンアームズの庭には、7本のケヤキの大樹が並んでいます。
オープンアームズの俳句添削教室の、『故・有馬正二先生』が詠まれた俳句に、「十二月八日ケヤキの大樹かな」
があります。 12月8日は、昭和16年、大東亜戦争の開戦日です。 当時20歳の青年であった先生の、現在まで
の60年間、そして、今の日々の暮らしへの深い感慨が込められています。 ケヤキの大樹と長い人生を生きぬいて
きた高齢者の人生との間には、相通じるもの『年輪』があります。
さて、コミュニケーションは、オープンアームズの三大サービスの1つです。 コミュニケーションとは、
オープンアームズの関係者(ご利用者・スタッフ・訪れ集う方)の意思(考えや想い)がお互いに通じ合うこと
です。 今は携帯電話が普及し、気軽に連絡できますが、大切な用件や落ち着いて伝えたい内容ならば、封書が
一番です。 おしゃべりでは話せないこと、おしゃべりが得意でない人には、文章が役立ちます。
文字を用いてのコミュニケーション・・・これが、オープンアームズの文集の発想です。
文集の名称は、高齢者への敬意を表しています。 文集には、自分史・随筆・俳句などが載せられます。 この中
では、自分史へ特に力を入れます。 自分史に関連して、作家「長谷川 伸」の歌をご紹介します。
「来し方は愉しからずや そこはかと想い出ることよし悲しとも」
子供や孫は、父母・祖父母のひたむきに生きた姿、注いでくれた愛情を、しっかりと受け止めたことがあった
でしょうか。 人は誰でも、自分を受け止めてくれる人がいないと、心の調和を失い、高齢者の場合はボケの世界
に迷い込みやすいのです。
高齢者には、生きた時代の暮らし・喜怒哀楽・感動したこと・誇り・大切にしている価値観・先祖や先人から
受けた教え・・・を子や孫に伝えてもらいます。 ただし、「私の秘密」は天国まで胸に抱いていってください。
理解することは、愛することです。 高齢者の人生を理解すれば、入所者同士は単なる同室者・同席者でなく、
スタッフと高齢者は単なる介護する人・される人でなく、家族と高齢者は単なる血縁でなく、親愛なる関係に
変わります。
随筆は、現在の感想・感慨・人生の思い出のひとこまなどです。
俳句は、俳句クラブの人が先生の添削を受けて、月1回、特設展示版に発表されています。 文集には、その中
から高い評価を得た句を載せています。 俳句の先生・ボランティアの方には、ご協力に深謝いたします。
文集は、オープンアームズご利用者のほか、関係者全てのコミュニケーションの場ですので、皆様の寄稿を
お待ちしております。
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④文化的・知的環境
もてなし方は、相手への敬意を表します。 ご利用者(高齢者)に失われがちな、誇りと感動を回復させます。
そのため、文化的・芸術的・知的な刺激のある環境と、エレガントな生活を提供しています。
インテリア・家具調度品は大人向けの美意識に合わせ、幼稚園と見まがうような飾りつけは御法度です。
◆当老健の玄関を入ると、欅の大樹から造られた重厚な置看板があります。
「医療法人黒澤医院併設 老人保健施設オープンアームズ」と、理事長の恩師が墨書されたもので、堂々とした
存在感があります。
◆判りやすく美しい風景画・美人画が、その季節に合うものに交換しつつ、全階にかけられています。
◆ワインレッド(当老健のテーマカラーである)の飾りカーテン、通称「ノルウェー椅子」(褥瘡予防にもなる、
ゆったりとした座り心地の良い、おしゃれで高品質な椅子)。
居室には高知県産の木製チェスト、入口には、居室名を表現する額装した花のちぎり絵がかけられています。
◆1階のパーティションや壁面には、俳句クラブの人が桔槹吟社の先生に添削を受けた俳句やボランティアの川柳
が、色紙・短冊・条幅に墨書されて展示されています。
集団レクリエーションの一つで、人気の高い陶芸の作品も、パーティション前の展示棚にたくさん並べられ、
賑わっています。
◆専門家の協力を得ている文化的活動は、園芸・ちぎり絵・俳句の添削・陶器制作・リトミックなどです。
陶芸の先生は、平皿・コップ・鉢・一輪挿し・干支・ランプシェードなど、高齢者が作りやすいオリジナルな
作品を考案し、自分の窯で焼き上げて届けて下さいます。 ご利用者は、形や色が違う自分だけの作品を喜び、
やりがいを感じています。
陶器の他、ご利用者の手になる手工芸品・文化的作品は、本人・周りの人・家人からも「老人の手すさび」との
後ろ向きの評価を受けないように、作業中に部分的に協力し、仕上げや展示を芸術的にサポートします。
◆当老健の庭には7本の欅の大樹が立っており、四季折り折りの風情ある雄姿を眺められます。 正面玄関ポーチ
にある木製の大樽や、老健、医院まで通じる沿道には、季節の草花、花木、観葉植物が園芸ボランティアによって
植え込まれ、訪れる人の目を愉しませ、心の潤いになっています。
ご利用者が作った陶器の鉢には、製作者自身がスタッフの協力を得て、花や観葉植物を植えて楽しんでいます。
◆2階の広いベランダでは、園芸クラブの人がボランティアの指導を受けて花や野菜を植え、大欅を見上げながら、
外気浴、おしゃべり おやつを楽しみ、気分転換しています。
◆理容容室では、現役の2人の理容師が、ご利用者の好みのヘアスタイルに仕上げ、ハンドマッサージでご利用者の
心を温めてくれます。 ご利用者に、美しい色の服や装身具を自由に楽しむ “おしゃれ” を奨励しています。
◆家人にも、きれいな服の差し入れをお願いしています。 明るくきれいな色の服は、殆んどの高齢のご利用者
に似合い、その人の気分だけでなく、周りの雰囲気も明るくしてくれます。
他のご利用者も明るい服を着ることに抵抗が少なくなる、というように、良い波及効果がみられます。
◆「晴れの日」には格別な服を着ていただき、化粧やマニキュアや結髪を施します。 結髪・着付は、有資格の
スタッフが行います。
男性のご利用者には、整髪し、ヒゲを剃り、ネクタイとブレザー、背広を着用していただきます。
・ある夏の行事で絽のお召しと夏帯や浴衣を着用したご利用者は、とても若々しく、別人のようにきれいでした。
・また、ある年の新年会では、黒留袖で正装したご利用者が、お得意の民謡「さんさ時雨」を、並み居る
他のご利用者・スタッフ・ボランティア・家人すべてを前にして情感よく歌い、感動させられました。
・100才の誕生日を迎えた女性のご利用者は、当老健でお祝いの行事を開催し、スタッフが提供した訪問着一式
で装い、家人が準備した祝い着(赤い帽子とちゃんちゃんこ)を重ねました。
大きな金屏風を背にして、参列者(他のご利用者・家人・スタッフ・行政関係者)と対面し、にこやかに微笑む
美しい姿はすばらしく、「人生最良の日」として参列者すべての心に刻まれました。
◆芸能・音楽ボランティアは、老人相手だからと低俗なものや拙い芸でお茶をにごす考えもありますが、当老健は、
プロはだしの本物の技がご利用者の魂をゆさぶることを求めます。 そして、本物の訪れにふさわしい演出と
もてなしで応えます。 ご利用者の表情は、次第に輝きと落ち着きを増していきます。
◆オープンアームズのご利用者(ご入所者・通所者)本人の作品の他、家人・知人・友人・スタッフ・黒澤医院の
患者さんにも、水彩画・書道の条幅・押し花絵・手芸品・生花・鉢花・ポートレート・写真のポスター・川柳・
その他の展示に参加していただいています。
今年は、手彫りの見事な仏像三体を手づくりのケースに安置して貸して下さる方のおかげで、ご利用者・ご家族・
スタッフ・その他当老健を訪れる皆様が立ち止まり、祈る姿がみられ、心の慰安になっています。
様々な展示物は、ご利用者・タッフ・家人・そして当老健を訪れる人々と相互のコミュニケーションと考え、
大切にしています。
⑤生活リハビリテーション
今日の進んだリハビリテーションは、「目標指向的リハビリテーションと介護」が柱で、それによれば、
リハビリテーションの目的は「リハビリを受ける人の生活の質と人生の質をよくすること」とされています。
当老健でも、その柱に準拠したリハビリテーションをめざしています。
具体的、かつ、不可欠な方法は、
第1に、人生の主目標を決めます。(どういう人生を生きたいのか、何をして生きたいのか)
第2に、主目標を実現する具体的な生活像を定め、その生活像に的をしぼった活動向上訓練によって
活動能力を向上させます。
住居内での、朝起きてから夜寝るまでのすべての日常生活行為(ADL:起居動作・食事・整容・排泄・更衣・入浴
など)やコミュニケーション(会話・電話・新聞を読む・書くなど)の訓練をすることに加えて、主婦業・趣味活動・
社会に出て行う活動(町内会の活動・文化活動・趣味目的の外出・レジャー・旅行・ドライブ・友人との交流・
TV以外の娯楽・冠婚葬祭)などに必要な活動能力の訓練を行います。
住居がかわったり、外出して行う活動がかわったら(目的地も移動方法も距離もかわることになる)それらに
的をしぼった活動向上訓練に切り替えます。
前述の第1、第2の点に関しては、以下を理解する必要があります。
①第1の点 :加齢によって身体が不自由になっても、人生をリセットして、新しい人生にチャレンジします。
人生の主目標については、
A)リハビリを受ける人に選択権があります。
B)変更や調整には、病気については医師が、活動能力についてはリハビリ療法士が、それぞれ
専門家の立場からアドバイスできます。
②第2の点‐ a:活動向上訓練は「麻痺や筋力低下が、機能訓練でよくなってから」行うものではありません。
よくならないうちでも、疲れないように、痛くないように負担を軽減しながら、歩行補助具・装具
などを積極的に使って活動向上訓練ができるだけでなく、生活の目標像に、より速く到達できる
ことが証明されています。
‐ b:機能訓練だけをゆっくりやっていては、活動が向上できないために、訓練人生になってしまいます。
人生はどの年齢であろうと有限であり、高齢や重い病気のために余命が短くとも、むしろ短いから
こそ人生を大切にすることをめざし、大切な人生の主目標に近づくために活動向上訓練を行います。
‐ c:実用歩行とは目的のために歩行することで、普通の生活で行っているものです。
目的を持たずに歩行するだけの訓練歩行は活動向上訓練ではなく、歩行することによる廃用症候群
の予防や精神活性化の価値はあるとしても、人生の主目標に近づくことはできません。
廃用症候群の予防には、実用歩行による生活活性化が最も効果があるとされています。
短時間の歩行や立位で行う日常生活行為(ADL)は、次善の方法としてありますが、常時車いすを離れない生活では
廃用症候群を防ぐことはできません。 膝痛、腰痛によって生活が不活発になり、廃用症候群を起こし、廃用症候群の
様々な症状が重複(これがとても多い)したために歩けなくなって車いすを使う例が、世の中の一般高齢者には少なく
ないのです。
当老健では、治療によって疼痛を緩和しつつ、歩行を奨励しています。
◎当老健では、不活発な生活を活性化するために、生活空間の拡大と人的交流の拡大に取り組んでいます。
自宅では伝い歩き・もたれ歩き・つかまり歩きができている通所・入所のご利用者が、施設では、転ぶと危ないからと
車いすを使いがちです。 当老健では、4点杖やシルバーカー歩行による歩行を励行しています。
◎活動向上訓練では、リハビリ療法士の、臨床運動学に基づく極めて専門的な技術が必要です。
具体的には、生活場所(居室・食堂・洗面所・トイレ・浴室)、使用する用具(杖・装具)、介護内容、移動方法・
姿勢(伝い・もたれ)、便器・洗面台の前で置く足の位置(これが重要!)など細部に注意して行うものです。
◎当老健では、介護も活動向上訓練の目的をもって行うものですから、介護士とリハビリ療法士がコミュニケーション
をとり、リハビリ療法士の指導を受けながら目標指向的介護をめざしています。
⑥廃用症候群(生活不活発病)
高齢者に起こりやすく、悪循環に陥れば、寝たきりになったり、生きがいを失うことになります。
年のせい、病気のせい、と誤解されています。
生活が不活発であると、全身や身体の一部、そして精神機能にまで影響が出ます。
原因は3つ。
1. 麻痺、筋力低下、不随意運動、痛みのため身体を動かさなくなった。
2. 慢性疾患、手術(小手術のときさえある)後に安静をとりすぎた。
3. 定年、転居などにより外出不足(閉じ込もり)になった。
心身機能の低下が回復しないうちでも、活動向上訓練によて、廃用症候群を回復させることが可能です。
当老健では、日課としての昼寝を廃止(昼間から横にならない。 入浴後の昼寝も、特別な疲労や一般状態・
バイタルサインなどの異常がない限り行わない)し、座位や歩行の時間・距離をふやし、活動向上訓練の励行に
努めています。
ご利用者にリハビリテーションへの意欲をもたせるには、「心理的ケア」と称して愛情深く悩みを聴くだけでは
不十分です。 学習療法を受けているご利用者は、リハビリテーションを理解し、意欲が出てきます。 そして、
活動向上訓練で能力が向上することで、更に意欲が高まっていきます。
「車いすを離れて歩くこと」の可能性を常に留意し、挑戦しているご利用者の多くは、高血圧、心臓病、糖尿病、
骨・関節の疾患などをかかえており、リハビリテーションの安全管理(リスク管理)が必要です。
リハビリテーションにおけるリスク管理は、医師とリハビリ療法士との間で随時ディスカッションしたり、連絡票や
リハビリテーション処方箋などでコミュニケーションを十分にとりながら行っています。
当老健では、リハビリ療法士の必要配備数 0.5人(常勤換算)のところ2人の作業療法士が従事し、活動向上訓練や
自主トレーニングを指導するほか、上肢機能障害者には、リハビリ作品の指導に成果をあげています。また、学習療法
では、他の専門職と同じ学習支援者です。 学習者の人柄や人生への理解を深めることを通して、学習者の将来の
生活像とリハビリテーションを研究しています。
⑦学習療法 ~学習者と家族とスタッフにおける変化の紹介~
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以下は、平成25年5月12日に開催された「学習療法シンポジウム in 仙台」での、黒澤施設長の講演です
画面をクリックしてください
学習療法は、施設全体を変化させる
~ 変化を起こした要因を探る ~
施設長 黒澤 厚美
オープンアームズは、平成10年に開設して15年目を迎えます。
私は、平成18年に導入した「学習療法」が当施設に極めて価値のある変化をもたらした要因と、
震災に於いて施設サービスの早期復旧を後押しした要因についてお話しいたします。
(1)施設の目標 : 高齢者の生活を創造する
多くの専門職が専門的知識を磨いて協力し、一人ひとりちがう高齢者の可能性を探求し、
生活スタイルを、当施設以外の生活環境・住居を視野に入れながら、前向きに創造する。
(2)4つのサービスの柱
①コミュニケーション ②栄養の重視 ③生活リハビリテーション ④学習療法
サービスを進歩させるため、学問的根拠に基づく、優れた方々の実践を採り入れてきました。
栄養学は、佐藤和子氏。 介護学は、竹内孝仁氏。 生活リハビリテーションは、上田敏氏・大川弥生氏。
認知症は、竹内孝仁氏・金子満雄氏です。
月次検討会で各々の方の著書を学び合い、スタッフで構成される専門委員会(食事・排泄・入浴・整容・リスク
マネジメント・その他)の研究発表や、多くの専門職からの情報提供を行ってきました。
3つのサービスの成果が上がり、ご利用者の前向きな変化は想像以上に現れました。
壁に当たったのが、やる気のない人、コミュニケーションがとれない人で、ずいぶん悩みました。
平成18年3月、当須賀川市で川島隆太先生の講演があり、悩みの種は、脳の中の前頭前野という最も高度な働きをする
ところが加齢によって衰えているからであり、「学習療法」で改善する、との主張を聞き、早速先生の著書や関連する情報
を入手し、各専門職の主任を核とし、全スタッフに学びを広げ、同年10月に導入しました。
福島県の導入施設では、第1号でした。
学習療法の導入で何が変わったか
①学習者の変化
導入時に期待したもの「コミュニケーションとやる気」が出てきました。
具体的には、スタッフや家族に言われたことがわかり、生活がしやすく、リハビリテーションがやりやすくなります。
何かやりたくなって、集団レクリエーションやリハビリテーションに積極的に参加されたり、他にも関心が広がり、
明るくふるまうようになると、周りの雰囲気も明るく変わってきます。
学習者がよくなっていく起点は “笑顔” です。 脳科学では、笑顔が出ると、衰えた脳の働きが戻った証拠といいます。
上半身がうつむいて眼がうつろ、視線が合わない、面会に来る夫に “いい人” がいるとの妄想をもっていたご利用者が、
姿勢を正し、周辺を見回し、表情がよくなり、「あの人が困っているからみてあげて」とスタッフに伝え、夫に会うと
笑顔をみせ、労うように変わりました。
社会性を表す行動が増えます。
具体的には、あいさつ・おしゃべり・冗談を言って笑わせる・親切な行い・思いやる・感謝する・労う・ほめる・
謙遜するなどです。
ADL(日常生活動作)の自立がはじまる人もあります。
具体的には、トイレへ向かう・「トイレへ連れて行って」と要求する・身の回りをかたづける・チェストから着る服を
選んで取り出すなどです。 学習や集団レクリエーション・クラブ活動に集中したり、理性が戻り、望ましくない感情
や行動を抑えるようになり、怒ったり泣いたり叩いたりしなくなります。
私共は、認知症の高齢者が回復する過程を目の当たりにして、自信が出てきました。
ここで、何とかやってみよう!
②家族との信頼関係の向上
家族は、認知症高齢者が怒鳴り散らさなくなり、しゃべるようになり、聞きわけがよく、笑顔をみせ、労いの言葉を
かけ、家族であることがわかり、心が通じるなどのよい変化に出会うと、一様に驚き、感動し、嬉しくて泣きそうに
なります。 「こちらにお世話になってよかった」と、当施設のサービスに信頼をよせ、認知症は治らない・元には
戻らないという、それまでの “常識” が変わっていきます。
学習療法はなぜ変化を与えることができるのか
①教材の効果
イ)「昔のことを思い出しましょう」では思い出せません。 認知症の人は、学習療法の読み・書き・計算で
脳トレーニングをすると、記憶力が改善し、思い出す力は増しますが、それだけでは思い出せません。
かといって、当施設でも行った回想療法でも思い出せない人が大勢いました。
ロ)学習療法の読みの教材は、学習者にとって懐かしい時代(主に昭和の64年間)の楽しめるもの(童謡・唱歌・
会話文・暮らしと道具・情景文・仕事・商売・有名なでき事・日記文・紀行文・やさしい文学作品)など多岐に
亘っているので、長い人生を生きてきた高齢者の方には、必ずどこかにフィットするものがあると感じています。
ハ)学習者とスタッフが読み書き計算のあとに交わしているコミュニケーションは、日常生活における「飯・風呂・
寝る」などの片言や表面的な会話ではなく、学習者の人生・体験・喜怒哀楽・隠れた夢や願望・失意・誇りなど、
心のうちが語られます。 スタッフは学習者の想いを理解し、受容します。 学習者は嬉しそうです。 お互いの
信頼関係が生まれます。
ある学習者曰く、「家では何もできないし、家族と話すこともできない。 楽しみがない。 ここは楽しいよ。」
別の学習者曰く、「私が一番幸せを感じるのは、頭の体操をしているときなの。」
オープンアームズ文集は、毎年、文化祭で発刊されます。 “文集の意味するもの” と題した序文に、
「理解することは愛することです。 高齢者の人生を理解すれば、入所者同士は単なる同室者・同席者でなく、
職員と高齢者は単なる介護する人・される人でなく、家族と高齢者は単なる血縁でなく、親愛なる関係に
変わります」とあります。
スタッフは高齢者を介護の手間がかかる人と思っていましたが、コミュニケーションによって、学ぶべき人生の
先輩・親しく交際する友人と思われて、謙虚になります。
人間というもの、人生というものを知るためのコミュニケーション力・観察力を高め、成長しています。
②プログラムの効果
イ)「学習療法は施設全体の方針やケアの向上のために実施するものであり、全職員で取り組んでいくものである」
との考えから、当施設の全職員が、多種の専門職の垣根を越えて学習スタッフです。
月次検討会では、トップの理事長・施設長も同席します。
当施設が独自に評価を考案した『学習者日報の学習時特記事項』は、表情・理解力・コミュニケーションの
各々を5段階で評価し、総合点のベストを15点とするものです。
『学習後の特記事項』は、「学習者の日常生活の変化する姿」の記録です。 学習者と接する場面や観察のし方
が、専門職によって同じではなく、学習者日報の記述も異なります。 それを集約して学習者の全体像をつかみ、
月次検討会で出席者全員でリアルに共有されます。
ロ)共有された生活像から、個別のケアのあり方が深められます。
ハ)一連の流れがあるから、効果が生み出されます。
ニ)学習者以外とのコミュニケーション・観察力・個別ケアも向上します。
施設責任者としての関わり方
医師として、施設長として関わることの大切さ
イ)月次検討会の場は、医師としてご利用者の状態を把握できる絶好の場です。
ご利用者は、体調が悪ければADLは低下し、生活リハビリテーションもうまくいきません。 学習者も同じ
であり、学習の実力も発揮されません。
医師としては、学習者が休んだり学習者日報の特記事項の評価が下がった場合は、急性疾患の管理を強化し、
当面の苦痛を随時緩和します。 視聴覚の悪化も確かめます
ロ)施設長としては、スタッフが学習者一人ひとりに対して、どういう気持ちで、どう向き合っているのかが
わかります。
3つのQOL(1. 生命の質 : 長生き・体調の安定か? 2. 生活の質か? 3. 人生の質か?)のうち、現在は
いずれが主な目的であるかを確かめることができます。
また、目標を支援するやり方を、スタッフとディスカッションできます。
まとめ
オープンアームズは、目標の旗のもとに結集します。
特に、学習療法の導入により、理事長・施設長・スタッフ・学習者 及び 他のご利用者・家族を含む施設全体
において、相互の間に共感・思いやり・信頼・絆が築かれています。
東日本大震災の時、あるご入所者がおっしゃいました。 「私は一人じゃない。 皆さんといっしょだから
安心です。」 “皆さん” とは、スタッフだけではありません。 ご利用者同士も含む、施設全体です。
94歳のご入所者は、克明な震災日記「ここにいてよかった」を残されました。 そこには、一貫して、感謝と安心と
信頼の心が綴られています。
オープンアームズ文集第8号では、東日本大震災を特集しました。 多くのスタッフが、指示を待つ人でなく、
脳をフル回転させて自発的に創造的に入所者の安全を守り、施設サービスを提供し続けた活動は際立っていました。
大震災から三週間めに、被災が比較的軽かった1階の部屋で学習療法を再開し、学習者の嬉しそうな笑顔に出会い、
緊張が続いてこわばっていたスタッフが元気づけられたとき、学習療法によって育てられた笑顔こそ脳のエネルギー・
人と人を結ぶエネルギーであると再認識しました。
認知症のご入所者は、笑顔とコミュニケーションが増えた当施設で元気に生活しています。
スタッフは、学習者が前向きに変化しているのを見て、自らが役立っているとの手ごたえや誇り・やりがいを持って、
改めて自らの専門分野の仕事に臨んでいます。
生活を創造するための良いケアプランは、脳の活性化にこれほど有益な学習療法を除いては成立しません。
認知症でない人にも、『認知症を予防することや、意欲と目標をもてるように、そして、その人の人生の質が向上する
ように』、学習療法を役立てることをはじめています。
ケアは、型が決まった既製服ではなく、一人ひとり違うオーダーメイドの服でなくてはなりません。
学習療法は、そのための欠かせないツールであると考えています。
最後に、学習療法によって、学習者の「生活の質」と「人生の質」(楽しみ・喜び・幸せ・感動・生きがい・自信・
自尊心・誇り・担える役割り)が向上しました。 当老健の目標に近づいており、たいへん嬉しく思っています。
学習療法に関して、今後のホームページでは下記の項目を発信する予定です。
1. 学習療法を当施設が効果的に運営している理由
2. 学習療法の実施ポイントを脳科学の知見によって理解を深める
3. 学習療法はコミュニケーションを革命的に向上させているイノベーションである
4. 事例研究の報告
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学習療法とコミュニケーション
学習療法サブリーダー
介護士 富永 正子
「おはようございます。 今日も楽しく、頭の体操をしていきましょう。 よろしくお願いします。」 と、学習療法は、
この挨拶から始まります。 そして、コミュニケーションも、これから始まります。
私は「学習療法」を、恥ずかしいのですが、当施設で導入をすると言われるまで全く知りませんでした。
学習療法という言葉を初めて聞いた時は、「今さら勉強するのか、なんのために?」 というのが率直な感想でした。
勉強をして何になるのだろう、そんなことをして楽しいのだろうか、という疑問を抱えながら、私は研修を通して、
学習療法というものを学んでいきました。
リーダー研修では、実際に学習療法の現場を見学させてもらって、まずはじめに思ったことは、ご利用者(学習者)も
学習スタッフも楽しんで行っているということ。 これが学習なんだと、その時実感しました。
学習療法とは何か。 学習療法が目指すものは、「音読」「計算」を中心とする教材を使って、学習者と学習の支援者
(学習療法スタッフ)が十分にコミュニケーションをとりながら楽しく学習することにより、学習者の認知機能や
コミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能 : ①思考する(考えて工夫する) ②好ましくない行動を
抑制する ③コミュニケーションする ④意思決定する ⑤好ましくない情動を抑制する ⑥記憶をコントロールする
(思い出す、覚える) ⑦意識を集中し、注意をする ⑧注意を分散する(2つ以上のことを同時に行う) ⑨やる気
を出す の維持・改善を図ることが、「学習療法」といわれています。
どうすれば前頭前野を活性化できるか? これは、誰でもが簡単に出来ることです。
例えば、目と目を合わせて話しをしているとき、本を音読しているとき、数を数えているとき、字を書いているとき
= 「音読・計算・コミュニケーション」 となるわけです。 それも、難しい計算を行うことよりも簡単な計算をしている
ときの方が脳は活性化されています。 そしてなによりも、ただ読み書き計算をするのではなく、コミュニケーションを
とりながら学習をするということ。 これが、学習療法の中で一番大事なことだといえるでしょう。
当施設では、平成18年10月より学習療法をスタートし、1年が経ちました。 学習者13名からスタートし、現在は
20数名が行っています。 この1年を振り返ると、様々なことがありました。 学習療法を始めるにあたり、思い悩む
こと、立ち往生することもありました。 学習療法を始めて間もない頃は、学習スタッフに不安や戸惑いもみられました。
ご利用者の日常生活の中にどのように学習療法の時間を組み入れたらよいのか、ご利用者とのコミュニケーションの
とり方、拒否の方への対応の仕方、日報の書き方、誘導の仕方などたくさんありました。
その反面、ご利用者がどのように変化していくのかと、期待も大きかったように思います。
はじめのころは、学習スタッフが緊張していたためうまく学習支援することが出来ず、ご利用者の方には不安を与えて
いたかもしれません。 読み書き計算を行うことだけでいっぱいになり、コミュニケーションがうまくとれなかった
ことを思い出します。 「楽しい」というのも、この時はまだ感じられていなかったように思います。 そうした中で、
学習を行い、ご利用者一人ひとりと向き合い、話をし、より一層その方を理解しようする観察力、姿勢が身についてきた
ように思います。
学習にも慣れてくると、‘ 楽しんで ' 行えるようになりました。 また、ご利用者の方にも変化がみられるように
なりました。 自分の意思を積極的に示してくれたり、身辺の自立(ベッドまわりの片づけなど)が行えるように
なったり、他のことへも積極性がみられてきたり、学習をしたい、何が何でもしたいという方や学習時間が来るのを
楽しみとし、準備をして待っている方、学習をするのが楽しみと言ってくれる方、何よりも学習者のほとんどの方が
笑顔が増えてきたように思います。 その笑顔を見たときに、「学習療法が目指すもの」が見えてきたように思います。
学習療法を通して、ご利用者一人ひとりと向き合い、コミュニケーションをとることで、嬉しい変化や喜びをよく見て、
気づき、感じて、さらに共感し、日常の個別ケアヘつなげることができてきました。
私たちスタッフにも大きな変化が見られるようになりました。
学習療法を行うことで、ご利用者との関わりが増えたこと。 ご利用者の気持ちを聴くコミュニケーションの大切さを
再確認したこと。 学習者だけでなく、その他のご利用者の方への声かけなどもうまくできるようになったことなど、
たくさんあります。 また、ケアに対する思考も高まり、行動力に結びつくという変化もみられています。
私たちスタッフが学習療法から学び得たものは大きく、ご利用者の方の「その人らしさ」を発見することができた
と同時に、コミュニケーションにより、心が通じ合うようになりました。 コミュニケーションが深まるということは、
学習者自身にとっても、また、学習を支援するスタッフにとっても、大きな意味をもっています。 これまで、
コミュニケーションがとれないために意味が上手く伝わらず、いらだちや不安を抱えていた人も、コミュニケーション
がとれるようになることで、ストレスがずいぷんと解消されたはずです。 意思の疎通がとれることにより、夜間の
ナースコールの減少もみられてきています。 自分の思いが伝わるというのはとても大切なことだといえるでしょう。
また、コミュニケーションを通じて、人間としての関わりや理解が、より厚く深いものになっていくはずです。
そこから生まれる信頼関係がご利用者の方々にとっても大きな喜びと安心となることでしょう。 入所されている方
にとって、施設での生活は、第二の人生そのものだと思います。 その中で、「自分を理解し、知ろうとしてくれる人
がいる」、「自分と気持ちを通じ合わせられる人がいる」、そうなったとき、その施設はご利用者の方にとって、
「第二の我が家」となるのではないでしょうか。 お互いの信頼関係が築かれてきて、ご利用者の方も私たちスタッフも
楽しい施設で生活が送れるようになると思います。 学習療法は忙しい業務の中でも唯一、ご利用者の方とゆっくり
話しができる大切な時間なのです。 これがなかったら、個々のご利用者を把握し、その人にふさわしい個々のケアを
考えるためのツールがなくなってしまいます。
そのための学習療法があり、そのためのコミュニケーションがあるのだと思います。
「今日も楽しかったですね。 明日もぜひ来てくださいね。 私、楽しみに持っています。」
これからも楽しい学習、楽習を目指して取り組んでいきたいと思います。
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